ターボルとカップかコーン

ターボルとカップかコーン

早起きしなくてもできる電車のちいさな旅。
ゆっくり朝ごはんを食べて、そろそろ行こっかという感じに家を出て、プラハ中央駅からターボルへは週末のお昼くらいでも、大体一時間置きには電車があって。乗って約一時間半、田園風景を見たり、音楽を聴いたりしているうちに着いてしまう電車旅。ターボルの駅で早速やらかしてしまった。ホームから通路に降りて、反対側の出口に出てしまったのだ。人も少なく明らかに間違ったとわかるから心配ない。急ぐ旅でもないから落ち着いて戻って、そのまた反対の出口に。

駅を出て左手には郵便局、その前にはターボル〜ベヒニェ線の駅がある。目的もなくこの古い車両に乗ってみたい。それにはもうちょっと早起きして来ないとなぁ。今度は反対に右手に外れて行くと川を堰き止めた人工池があって、そこで景色を眺めたり、キャンプしたり?植物園があったりもするみたい。それもいいなぁ〜などと駅の周りを一巡り。でも、まずは駅に背を向け、公園を抜けて道なりに真っ直ぐ歩いて、ジシュカ広場を目指そう。広場までの道はとにかく楽しい。建物が大き過ぎず親しみがある。入り口に施された自然がモチーフの彫刻を眺めたり、窓辺のゼラニウムを見たり、開け放った窓から聞こえる家族の団欒を感じたりしながら歩く。面白そうなお店で、でも看板がない所なんかもあった。

ジシュカ広場に着き、まずはフス戦争の英雄ヤン・ジシュカ様にご挨拶。更に裏道に迷い込んで行こうとすると、ご主人の様子がおかしい。「ターボルでは自由に歩こうね」と言い合っていた筈なのに、なにやら目的がある様でどうも先を急ぐのだ。やむ追えず住宅街の児童公園でお弁当を食べながら話し合えば…わたしの「自由に」は今やってる旧市街グルグルのことで、ご主人の「自由に」とは自然の中を散歩すること、つまり…
私の自由していい=旧市街グルグル
ご主人の自由していい=自然の中を歩く
という大きな違いがあったのだ。なるほど!非常によく分かった。ここまではグルグル散策に付き合ってもらったんだから、ご主人の「自由に」もやってみようと歩き始まったけれど、ご主人にとっての「自由に」は先の谷までのガッチリ系ハイキング。手書き地図の左にはみ出しちゃう部分だ。

更に聴けば「先にはきっと気に入って、絵を描きたくなるような場所があるから見せたい」と言う。そうまで言われては仕方がない、ヨタヨタとついていけば、急坂が続き、確かに自然に囲まれてた素晴らしく美しい川や、脇道には更なる小川に滝まであったのだ。ヘトヘト。ヨタヨタ。

悔しいのは、かなりの距離を歩いたつもりでも、急坂をものの十分も登れば元来たジシュカ広場に戻れたということだ。狐につままれた気分。どうやら広場が高くなっていて、広場へはどこからも急坂を登らなければいけなくて、後ろはぐるっと周りを自然が囲んでいる仕組みで、結局、広場の周りをグルグルと歩いていただけだったんだ。もし攻めて行っても川だの坂だのに手を焼いているうちに打ち負かされそうだなぁ〜なんてことを考えながら、もう一回ジシュカ様を拝む。ここで訂正
私の自由していい=旧市街グルグル
ご主人の自由していい=旧市街の周りグルグル

満足したのか?それともよっぽどわたしがヨレて見えたのか?好きなお店に入っていいというので、地図に長い間印をしたままになっていたカフェに。お店は手作り家具や、かっこいいコーヒー道具、アイディアに溢れた装飾、ゆったり座れるアンティークのソファーなんかもあって想像以上にいい雰囲気。棚にはベルリンまで飲みに行った THE BARN の豆が並ぶ。アイスでもバーンが出せると言うので、氷に注いでもらいました。アイスになっても香りが落ちず、驚く程の美味しさと優しさに足の疲れもすっ飛び、お土産に豆まで買いました。

締めにはこのカフェのすぐ側の人気と聞くアイスに並ぶ。いつもなら落とすのが怖くて必ずカップに入れてもらうのに、なんだか食べ食べ駅まで歩きたくなってコーンにのせてもらった。こんなにあれこれしても、帰りの電車はまだまだあって、しかも丁度いいタイミングで乗れました。

電車の中でガタンゴトンを聴きながら、忘れないうちに小川の景色をスケッチブックに色鉛筆で描いて、次の日にはパステルで仕上げました。ああ、楽しかったなぁターボル。長く読んでくれてありがとう。